ehon-labo’s blog  本の小部屋にようこそ libro favorito

絵本の持つ言葉の力、絵の力は、 深く、広く、温かく、優しく、楽しく未来への希望へとつなげる 言葉の世界.。絵本は、広い未知なる宇宙です。

ルリユールおじさん

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ルリユールおじさん

いせひでこ:文と絵

理論社

 

ルリユール(RELIEUR)。

 

その仕事とその仕事が生み出す文化は、

日本にはないものです。

(特別な一冊だけのために想定する手工芸的芸術作品として

アート分野に、近年見られることがありますが。)

 

 

フランスは、長い間、出版業と製本業が法的に禁止されていました。

そのため、装丁の手仕事がその分野で

成熟した一つの本に関わる文化を同時に作り出したと言われています。

 

 

約400年前から生まれた

製本の60工程を一人でする職人の仕事です。

IT化機械化の時代に入り、

そのルリユールという手仕事の職人さんの数は、

激変して、一桁になっているそうです。


日本でも日本独自の手作業の職人さんの仕事が

いくつも消えている現状とおなじです。

 

時代が、どんどん変わっていき

富に近年の目まぐるしい変わり様は

加速している現状です。

 

 

ひとりのルリユールという製本の仕事をするおじさんと

植物が大好きな女の子の出会いから

本の装丁の仕事が

世代を超えて話す会話から小さな光を感じ絵本です。

 

女の子は大事にしている植物図鑑がバラバラに教えてもらい

その手職人さんを探し、

作り直してもらうことになる。

 

その工程が、

丁寧に描かれ

その作業の日々に、

女の子とお手職人のおじさんの交わす言葉が

叙情詩の様に美しい。

美しい仕事の周りには、美しい空気が流れていると

思うことが多いのです。

パリの街の一角が美しく想像できる様に・・。

 

本を読む楽しみです、こんなふうに想像することが。

絵本を読む醍醐味です。

 

 

 

手職人のおじさんは言う。

 

ルリユールという言葉には

もう一度つなげる」という意味がある

 

 

「本には

大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱい詰まっている。

それらを忘れないように、

未来に向かって伝えていくのが

ルリユールの仕事なんだ」

 

その手職人のおじさん(ルリユールおじさん)のお父さんも

ルリユール。

 

息子のルリユールおじさんに残した言葉は

 

いい手を持て

 

修復され、丈夫に装丁されるたびに

本は、また新しい命を生きる」と・・

 

 

ルリユールおじさんは、自分の父の手を魔法の手のだと思っていた。

自分も魔法の手を持てただろうか・・と自分に問いながら・・

 

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本を描いた作者・いせひでこさんは

その絵本のモデルとなったM氏の工房には

窓ガラスの小さな紙片に

「RELIEUR-DREUR」(製本ー金箔)

「私はルリユール。いかなる商業的な本も売らない、買わない」

と、貼ってあったと言う。

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ソフィーという女の子が直してもらった植物図鑑は

2度と壊れることはありませんでした。

 

そして、その子は植物学の研究者になったと

絵本の物語の最後の言葉。

 

 

絵本の奥深くに流れる大事なことを見守るように

 大きなアカシアの木が印象的に

描かれている絵の美しい本。

 

 

フランス、パリの街並みが

一層心に思い出される一冊です。