ちょっとだけ
作:瀧村有子
絵:鈴木永子
大人になっても、
「ちょっとだけ」という言葉を使う時があります。
「ちょっとだけ、これ欲しいの」
「ちょっとだけ、手伝って」
「ちょっとだけ、好きかも」
「ちょっとだけ」は、遠慮がちに言うことが多いですね。
妹が生まれたなっちゃんの、「ちょっとだけ」は
おねいちゃんになったなっちゃんの、ママにおねだりしたい言葉でした。
たくさんの「ちょっとだけ」が、なっちゃんにはあります。
赤ちゃんが生まれ、妹ができてから。
ママを独占していたなっちゃんは、
一人でしなければならないことが、急に多くなりました。
ママは、赤ちゃんのおしめを変えたり、おっぱいをあげたりと
ママもたくさん、赤ちゃんのためのご用が増えました。
なっちゃんの「ちょっとだけ」はとてもいじらしい思いです。
ママが赤ちゃんのご用で忙しそうなので、
おねいちゃんになったなっちゃんは、ちょっとして欲しいことを遠慮します。
たくさん、たくさん、遠慮が出てきました。
一人ですることに、挑戦するなっちゃん。
忙しいママを思って、我慢をするなっちゃん。
ママは赤ちゃんのことでお仕事いっぱいを見ているなっちゃん。
今まで、気がつかなかったことを知っていくなっちゃん。
なっちゃんは、一生懸命一人で頑張ります。
だってママは、赤ちゃんのご用で忙しいんだものね。
なっちゃんは、一つ一つ挑戦して頑張ります。
えらいなっちゃん。
だって、なっちゃんは妹ができたことが嬉しいのです。
だから、ママも一生懸命お仕事しているから
なっちゃんも、おねいちゃんらしく頑張ります。
健気ななっちゃん、です。
がんばって一人でパジャマのボタンかけもでき
少し大人になったえらいなっちゃん。
でも、眠くなったなっちゃんは、
とうとうママにお願いをします。
「ママ、ちょっとだけ抱っこして」
眠くなった時、やっぱりママの抱っこはして欲しいこと。
ママは、そんななっちゃんに声をかけます。
「ちょっとだけ?」
「ママは、いっぱい抱っこしたいんですけど」
私は、このシーンを読むと、胸が詰まります。
ママの愛情とがんばったなっちゃんの笑顔。
「ちょっとだけ」は
ママとおねいちゃんになった子どもの間に
繰り返された素敵な言葉!
なっちゃんは、愛をいっぱいもらっているから
赤ちゃんを、抱っこする笑顔は
小さなママのように愛いっぱいの笑顔です。