おそとがきえた
『おそとがきえた』
角野栄子:文
市川里美:絵
高いビルに囲まれて、お日様の光もはいらない家に
チラさんというお婆さんと猫ちゃんが住んでいます。
窓から見える景色は、灰色のビルばかり。
光の届かない中にいると
心の中も沈んで、
灰色になってしまいそうですね。
おばあさんと猫ちゃんは、
素敵なお外があったらいいのにと
支え合いながら、
温かなスープで、心の暗さを取り除いています。
冬の夜は、湿気で濡れた窓ガラスに
お花をいっぱい描きながら、
心の平安を保っています。
そんなおばあさんと猫ちゃんに良き知らせが届きました。
外の景色
内なる景色
外の世界への願望と
内なる世界の平安は
慎ましくても
心が喜びます。
ささやかでも
嬉しくありがたいこと。
生きる喜びは
願いや希望の先にあります。
つつましやかな静かな日々に
お日様の光が届きました。
暗い光の届かない家で
柔らかな、優しいおばあさんと猫ちゃんのやりとりを
絵本作家の角野栄子さんの言葉は、
心の奥の思いを、そっと伝えてくれます。
そして、
絵本画家の市川里美さんの絵がその心を見事に
表情、仕草、色合いで伝えてくれます。
心の思いが、色に。
日常の暮らしの隅々に。
絵本の絵の力と言葉の力が
優しく、希望の光を届けてくれる秀作です。