ehon-labo’s blog  本の小部屋にようこそ libro favorito

絵本の持つ言葉の力、絵の力は、 深く、広く、温かく、優しく、楽しく未来への希望へとつなげる 言葉の世界.。絵本は、広い未知なる宇宙です。

おそとがきえた

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『おそとがきえた』

 

角野栄子:文

市川里美:絵

偕成社

 

高いビルに囲まれて、お日様の光もはいらない家に

チラさんというお婆さんと猫ちゃんが住んでいます。

窓から見える景色は、灰色のビルばかり。

 

光の届かない中にいると
心の中も沈んで、
灰色になってしまいそうですね。

おばあさんと猫ちゃんは、

素敵なお外があったらいいのにと

支え合いながら、

温かなスープで、心の暗さを取り除いています。

冬の夜は、湿気で濡れた窓ガラスに

お花をいっぱい描きながら、
心の平安を保っています。

そんなおばあさんと猫ちゃんに良き知らせが届きました。

外の景色

内なる景色

外の世界への願望と

内なる世界の平安は

慎ましくても

心が喜びます。

ささやかでも

嬉しくありがたいこと。

生きる喜びは

願いや希望の先にあります。

つつましやかな静かな日々に

お日様の光が届きました。

暗い光の届かない家で

柔らかな、優しいおばあさんと猫ちゃんのやりとりを

絵本作家の角野栄子さんの言葉は、

心の奥の思いを、そっと伝えてくれます。

そして、

絵本画家の市川里美さんの絵がその心を見事に

表情、仕草、色合いで伝えてくれます。

心の思いが、色に。

日常の暮らしの隅々に。

絵本の絵の力と言葉の力が

優しく、希望の光を届けてくれる秀作です。

 

youtu.be

 

自分軸を生きる!象のぐるんぱ

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『 ぐるんぱのようちえん』        

 西内みなみ:作  堀内誠一:絵  福音館書店こどものとも傑作集

 

寂しく、一人ぼっちだった

ぞうのぐるんぱ。

 

いつも精一杯頑張っていました。

自分を生きる!

自分軸という生き方!

 

コロナ君との共存をしていく時代。

思いっきり、自分を大切に生きてください。

 

***

 

子どもと子どもの本の世界を大切に愛する人たちへ。

絵本は、子どもたちだけでなく、

かつて子どもだった大人の心に届きます。

 

様々な経験を積んできた大人にとって、

もう一度出会った絵本から、

深い哲学的なものや見えないもの、

見えなくなったものに気づくことがあります。

 

硬直した心に子どもの時の柔軟な感性を取り戻す瞬間。

子どもの本は、 心が遊べる文学の贈り物。

 

50余年、世界中の古今東西の絵本を楽しんできました。

長い人生の日々にいつも絵本は傍にあり、

楽しませてくれただけでなく

様々な気づきや生き方のヒントがありました。

 

時に、小さな哲学書のように。

まさに、絵本や詩は心の処方箋。

 

大人になって人生の旅の途中に、

絵本に出会うきっかけとなれば幸いです。

 

・人生に疲れた時

・悩んでいる時

・癒されたい時

・子供に絵本を読み聞かせをしたいと思ってる時

・etc


『ぐるんぱのようちえん』心に響く大人の絵本〜かつて子どもだったあなたへ〜#Grandmaの絵本読み聞かせ#グランマが選ぶ世界の絵本#心が疲れているあなたへ#心の処方箋#大人になって絵本に出会う

 

ちいさなおうち

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バージニア・リー・バートン 文と絵   

いしいももこ 訳

 

佇んでいるものに宿る愛おしさは、
心のふるさにつながります。


自然の情景のなかに、
美しく溶け込み佇むものは、
なおさらです。


でも、
いつのまにか


人間が、
その秩序を壊していくことがあります。


豊かな人間性は、
豊かな自然の恩恵のなかで育まれるのに。

残念なことです。


いつか、
再生のときを迎えることが
奇跡的にあるとすれば、


自然によって、
新しく蘇る予感に安堵します。


ちいさなおうちが、
見せてくれる変遷の歴史は、


内包した大きく大切なものを
伝えてくれました。


バージニアリー・バートンは、

詩的な言葉と絵の圧倒的な力で、


時代を超えて、
その大きな大切なものを伝える芸術家だと


作品をみるたびに
深い感動を覚えます。

 

そらいろのたね

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作  中川李枝子  

絵  大村百合子

 

そらいろの種は、
どんな花を咲かせるでしょう。

空色という響きだけで、
わくわくです。


だれも空色の種なんて知りません。


想像するという「遊び」は、
創造する「楽しさ」に結びます。


ゆたかな発想から生まれた種は、
どんな「初穂」をつけ心を潤すのでしょう。


心が、
そらいろでいっぱいだったら、
しあわせですね、

きっと。

こどものおいしゃさん

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大和田 潔     絵・文

 

病気になると気分はすぐれません。
なんだか調子のおかしい体に、こどもは不安でいっぱい。
大好きなお母さんのやさしい目も、いつもと違って心配そう。
診察の時、こどもは大泣きをしませんか? 不安が爆発、かな?
この本を読んだら、きっと不安は飛んでいきますよ。
実際にクリニックを開業している医師の絵本です。
国連大学と連携をとり、
UNL(Universal Networking Language)による翻訳システムを用いた
5ヶ国語での表現となっている面白い試みの本です。

こどもたち こどもたち

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文    鶴見俊輔  

詩    谷川俊太郎

 

 絵日記  もりよしこ
     もりひでぶ

 

1948年・1954年の姉弟の絵日記です。
小学生だった時の絵日記は、姉弟が還暦を迎えた時、
二人を育てた90歳の母親からのプレゼント。
その当時のままの絵日記に
鶴見俊輔氏と谷川俊太郎氏が文と詩を寄せています。
「この時代の子どもの絵日記には、
あとの時代にない、
人間の暮らしの形が見えている」(本文より)
今、日本が
どこか忘れ、置き去りにし、捨ててきた大切なものが
思い出されます。

たいせつなこと

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マーガレット・ワイズ・ブラウン作

レナード・ワイスガード絵

うちだややこ 訳

 

 

大切なことってなんでしょう。

 

それは
案外あたりまえのことなのかもしれません。


あたりまえすぎて、
忘れてしまっているのでしょう。


『なんだろう?』と、
哲学の世界に踏み込んだように
難しく考えすぎて

見つけられなくしてしまうのかもしれません。

哲学だって、
本当はとても
簡単なことなのかもしれません。

リンゴが
リンゴであること

 

私が
私であること

他のなにでもなく
他のだれでもなく

りんごはりんごで

私は私である

 

たった一つのもの

たった一人のひと

 

他にはない

大切の存在です。

 


でも、
簡単なことほど、
難しいものですね。

 

当たり前なことほど
見えなくて、

 

大切なことに
気がつかない。

 

たいせつなことは

なんですか?

この問いかけを

いつも心に留めて・・。



バスラの図書館員

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『バスラの図書館員〜イラクで本当にあった話』

ジャネット・ウインター:文&絵

長田弘:訳

 

 

この絵本は、実話から生まれました。

 

2003年春、中東の危機が報じられ

イラクへの侵攻が始まり

バスラの町まで及びました。

 

文化都市バスラの図書館の本を守らなくてはと

図書館員だったマリア・ムハンマド・バクルさんと街の仲間で

3万冊の本を守った実際に起こった話。

 

本が外部に運び出された9日後に

図書館は焼失。

 

 

その出来事を、アメリカのニューヨークタイムズ社が

報じた記事(2003年7月27日付) から生まれた本なのです。

 

バスラは、

世界に開かれた港で文化的なイラク最大の港町。


バスラの図書館は、

本を愛するイラクの人たちが集まっていたところ。

 

 

図書館員のマリアさんは、

本の守ろうと、街の人に呼びかけ

戦火の中、運び出したのです。

 

「図書館の本には、自分たちの歴史が詰まっている」と。

 

マリアさんの図書館では、

本を愛する人たちが集まり

世界の問題や、精神の問題を話し合う場でした。


戦いが始まりそうな空気が強くなっていく中で

図書館で語り合う人たちの話は、

 

 

 

これからどうなるのか

家族の命は守られるのか

生き延びることができるのか

爆弾が落ちるのだろうか

など、

 

心配と不安で

戦争がどの様に始まり

どの様になるのか

 

そして、

 

 

自分たちに何ができるのか・・

 

 

戦火という町中を焼き尽くす火が

歴史が詰まった本も、

跡形もなく消してしまう恐れは

耐えがたいものでした。

 

 

本は

黄金の宝よりも、

ずっと価値のあるもの。

 

マリアさんの思いです。

 

 

図書館にはあらゆる言語で書かれた本

古い時代の本

新しい時代の本

預言者ムハンマドの伝記(700年前)

 (紀元後610年頃にイスラム教を起こしたと言われる

様々なジャンルの本は

次世代につなぐ大事な宝。文化資産です。

 

 

図書館が破壊されてしばらくして、マリアさんは発作を起こし

心臓の手術を受けたとのこと。

 

療養中も、図書館の再建をみるまでは

守り切るという決意は揺らぐことはありません。

 

新しい自由の時がくるまでと

がんばっているそうです。

 

 

本を愛する人たちの思いは、深く

大切に後世に残そうと活動する人たち。

 

 

立ちはだかる困難な壁を前にして 

いつの時も、

 

問われています。

 

 

自分たちに何ができるのか・・・

自分に何ができるのか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルリユールおじさん

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ルリユールおじさん

いせひでこ:文と絵

理論社

 

ルリユール(RELIEUR)。

 

その仕事とその仕事が生み出す文化は、

日本にはないものです。

(特別な一冊だけのために想定する手工芸的芸術作品として

アート分野に、近年見られることがありますが。)

 

 

フランスは、長い間、出版業と製本業が法的に禁止されていました。

そのため、装丁の手仕事がその分野で

成熟した一つの本に関わる文化を同時に作り出したと言われています。

 

 

約400年前から生まれた

製本の60工程を一人でする職人の仕事です。

IT化機械化の時代に入り、

そのルリユールという手仕事の職人さんの数は、

激変して、一桁になっているそうです。


日本でも日本独自の手作業の職人さんの仕事が

いくつも消えている現状とおなじです。

 

時代が、どんどん変わっていき

富に近年の目まぐるしい変わり様は

加速している現状です。

 

 

ひとりのルリユールという製本の仕事をするおじさんと

植物が大好きな女の子の出会いから

本の装丁の仕事が

世代を超えて話す会話から小さな光を感じ絵本です。

 

女の子は大事にしている植物図鑑がバラバラに教えてもらい

その手職人さんを探し、

作り直してもらうことになる。

 

その工程が、

丁寧に描かれ

その作業の日々に、

女の子とお手職人のおじさんの交わす言葉が

叙情詩の様に美しい。

美しい仕事の周りには、美しい空気が流れていると

思うことが多いのです。

パリの街の一角が美しく想像できる様に・・。

 

本を読む楽しみです、こんなふうに想像することが。

絵本を読む醍醐味です。

 

 

 

手職人のおじさんは言う。

 

ルリユールという言葉には

もう一度つなげる」という意味がある

 

 

「本には

大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱい詰まっている。

それらを忘れないように、

未来に向かって伝えていくのが

ルリユールの仕事なんだ」

 

その手職人のおじさん(ルリユールおじさん)のお父さんも

ルリユール。

 

息子のルリユールおじさんに残した言葉は

 

いい手を持て

 

修復され、丈夫に装丁されるたびに

本は、また新しい命を生きる」と・・

 

 

ルリユールおじさんは、自分の父の手を魔法の手のだと思っていた。

自分も魔法の手を持てただろうか・・と自分に問いながら・・

 

**************

本を描いた作者・いせひでこさんは

その絵本のモデルとなったM氏の工房には

窓ガラスの小さな紙片に

「RELIEUR-DREUR」(製本ー金箔)

「私はルリユール。いかなる商業的な本も売らない、買わない」

と、貼ってあったと言う。

 **************

 

 

ソフィーという女の子が直してもらった植物図鑑は

2度と壊れることはありませんでした。

 

そして、その子は植物学の研究者になったと

絵本の物語の最後の言葉。

 

 

絵本の奥深くに流れる大事なことを見守るように

 大きなアカシアの木が印象的に

描かれている絵の美しい本。

 

 

フランス、パリの街並みが

一層心に思い出される一冊です。

 

 

 

 

 

 

 

きこえる?

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『きこえる?』

はいじまのぶひこ:文&絵

福音館書店

 

サイモンとガーファンクル

The Sound of Silence 」by Simon & Garfunkel 

 

この歌につけられた言葉を連想します。

 

きこえる?

 

絵本を開くと、

音が聴こえてきます

いつも同じ音でなく

絵本を開いた時、

葉っぱの舞い落ちる時の音

風が頬をかすっていく時の音

花びらが開く時の音・・

 

耳を澄まさなければ聴こえてきません

心を開いていないと聴こえてきません

 

きこえる?と

問いかけられて、聴こえてくるかもしれない

ほらと呼び掛けられて、気づくかもしれない

 

星のひかるときの音

心臓の動く音

 

 

「きこえる?

 

  きみの なまえを よぶ こえ」

 

 

この最後のページの言葉は

読むたびに

胸を打つ呼びかけです。

 

祈りを伴った美しい呼びかけ。

 

この一言に出会うために、

時々この絵本を開きます。

 

 

追記:世界絵本原画展のビエンナールと言われる金のリンゴ賞受賞作品です。
            gallery mu-an(長岡市)で、版画展で出品された版画が、

   その後絵本になった思い出の作品です。